〈はぁ、真面目にアドバイスするから聞いて〉

「はい。よろしくお願いします」

 淡く光っている石を、耳元へ持っていく。



〈まず、告白するんなら、時間帯は夜がいいかな。で、場所は二人きりの静かな空間。これが、一般的な女の子の理想のシチュエーションだと思う。私も含めて、ね。だから、まずは大学の外で会う約束を取り付けるのが目標。あと……台詞くらいはキミが考えな。ま、気持ちがこもってれば大丈夫〉



「わかった。ありがとう。やってみる……けど、上手くいくかな……」

〈お昼誘うときみたいに、またイメトレしてみれば? さすがに私も、告白の練習相手はちょっとキツいけど、自分の家とかで〉

「うん、そうする。あー、明李さんのこと考えてたら、急に会いたくなってきた」



〈……本当に、すごく好きなんだね〉

「さすがにちょっと気持ち悪かった。ごめん」

 恥ずかしい発言をしてしまったことに、後から気づく。



〈ううん、違うの。……かなわないなぁって〉

「かなわないって、何がだよ」

 そういえば、伊澄にも好きな人がいるんだっけ。もしかすると、そのことかもしれない。



 気持ちの強さだけが恋愛成就に必要な要素だとしたら、僕はすでに明李さんと結婚していると思う。けれど、それだけではどうにもならないのが現実だ。



〈なんでもない。それじゃ、また明日ね〉

 意味ありげな言葉に隠された彼女の気持ちを、このときの僕は知る由(よし)もなく――。



「ん。また明日」

 石は輝きを失った。