複雑そうな表情を浮べて、写真の中の龍雅さんの写真を見る美優。
俺はそんな美優に
「龍雅さんは俺たちの憧れの人だ」
そう言った。

中村龍雅、彼は俺の前の雷龍の総長だった人。
龍雅さんは本当に強かった。
それは喧嘩だけじゃない。心も。
龍雅さんは守りたいものの為喧嘩をした。
そんな龍雅さんの事を雷龍の皆が慕っていた。
他の族にも雷龍12代総長は最強だと言われていた。
龍雅さんは俺たちの憧れの人だった。

ある時、龍雅さんは当時幹部候補だった俺達に龍雅さんの妹の話をした。
龍雅さんには俺らと同い年の妹がいるらしい。
その妹は、ある出来事をきっかけに光を失ってしまったという。

両親の交通事故。
龍雅さん達は家族4人で帰宅途中だった。
そして、龍雅さんの妹を庇って両親が亡くなった。
それから妹は光を失くし、感情を無くしてしまった。
彼女は本当はよく笑う元気な子だったらしい。
それが今では、めったに感情を出さない。
龍雅さんの前以外では、いつも無表情。
家でも部屋にこもっていて、食事も無理矢理食べさせないと取らないという話だ。

龍雅さんは俺達に、彼女を救うのを手伝って欲しいと言った。
憧れの人が俺達に頼ってくれた。
だからもちろん、俺達は
「「「「「はいっ!(はい··)」」」」」
と返事をした。

しかし、龍雅さんが妹を連れてくると言っていた日、今度は龍雅さんが事故にあった。
すぐに病院に運ばれたが未だに目を覚まさず、今も植物状態にある。

俺達は龍雅さんの事故の話を知った時、信じられなかった。
「なんで龍雅さんがっっ」
そう言わずにはいられなかった。

そして妹の行方も分からなかった。

半年後、俺は龍雅さんから総長を引き継ぎ、雷龍13代目総長になった。
幹部候補だった玲於達も、副総長、幹部となり、
一緒に雷龍を引っ張る事になった。

俺たちは龍雅さんの妹を探し続けた。
龍雅さんと約束したから。
龍雅さんの妹を闇から救い出すと。
だが、龍雅さんの妹の情報は得られなかった。
きっと龍雅さん自身が妹の情報をロックしていたからだろう。
それでも俺達はその名前も分からない、龍雅さんの妹を探し続けていた。

それが今見つかった。

中村美優。

今思えば、なんですぐに気づかなかったのか不思議なくらいだ。

美優が龍雅さんの妹。
俺達は何としても美優、お前を闇から救ってやる。