〜クエスチョンマークが浮かぶ〜

そんな彼ともただ席が隣になっただけといえばそれだけ。

私とはあの『よろしく。』
以来何も話はしていないけれど、一週間も経つと彼の周りにはたくさんの人が溢れていた。

「歩美(あゆみ)、帰らないの?」

放課後、そんな事を考える私に由梨が話しかける。

「あ、ごめんボーッとしてた。帰ろっか。」

教室を見渡すともうほとんど生徒は残っていなかった。
私は席を立ち、鞄を手にする。

「歩美さん。」

教室を出ようとした時、担任の佐藤先生が私を呼び止めた。
何だろうと思っていると、先生は少し目を泳がせる。

「何ですか?先生。」

先生が、少し困った様子で私を見つめた。

困った様子?

いや、少し違う。
哀しみ?憐れみ?

そんなものが含まれているようなそんな表情に私には見えて、体が強張る。

「んー。やっぱり何でもない。」

先生はそう言って「気をつけて帰ってね。」と手を振った。

何なのだろう?と私の頭の上にはたくさんのクエスチョンマークが浮かぶ。

「何だったんだろう?」

私は由梨と一緒に首を傾ける。

「歩美何か悪い事したんじゃない?」

由梨が冗談混じりに聞いてくる。
私は本当にそうなのではないかと少し不安になる。

「冗談冗談。そんな不安そうな顔しないでよ。歩美なら悪い事より良すぎて困るの方だよ。」

由梨はそんな事を言って笑っている。

「笑い事じゃないよ。あんな様子でやっぱり何でもないって不安しかないよ。」

そう私が言うと由梨は一層笑った。