「で?」


千葉が心なしか冷たい目で俺を見る。


「で?とは」

「だから、連れ去っといて告りもせずに何したんだって聞いてんだよ」



何した?何した、と言われても。


俺は思い出す。あれから、何度も何度も反芻しているあの言葉を。



「…おい千葉」


「何だよ」


「あのさ…」



“私だけ好きで…”



「…何赤くなってんだよ。やっぱ何かしたのか!?壁ドンくらいはかましてきたのか!?」

「べっ別に、赤くなってねーよ」


急に身を乗り出してきた千葉から椅子を引いて距離を取った。(ていうか壁ドンて何だ)


あの言葉の意味を千葉に聞こうかとも思ったが…


やめた。こいつも、俺と同じでどっちかというと理系脳。文系科目は苦手だったはず。



「はぁ…」


「おい人の顔見てため息つくなよ!」