氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】

ぬるま湯程度のものならば風呂に入れると知った朧は、それからというものの氷雨と風呂に入るのが楽しみになっていた。

一応屋敷の留守番という役目のある氷雨は毎回かなり渋るが、なんとか言い宥めて汗に濡れた身体を洗うため一緒に風呂に入った。

だが常に気の抜けない氷雨が心から休まることはなく、朧は氷雨の肩や腕を揉んだり甲斐甲斐しくしていたが――ただ単純に氷雨に触っていたいというのもある。

氷雨としては――こうして好いた女と一緒に居るだけで十分だったのだが…


「ふふ」


「なんだよ思い出し笑いして…やらしい奴」


「だって小さい頃はお師匠様とお風呂に入れるのは夏場だけで、しかも絶対触っちゃいけなかったから」


「絶対ってわけじゃないけど、人肌は俺にとって天敵だったからな。まさかこうして触れる日が来るなんて」


目を潤ませている朧の顎を取って上向かせると、そのまま唇を重ねて舌を絡めた。

ぞくぞくと身体を震わせる朧についまた昂りが増した氷雨は、朧の腰を抱いてそのまま端まで追い詰めて息ができなくまるまで攻めると、唇を離して雨のように頬に口付けを降らせた。


「お前は俺が女の百鬼と話す度に嫉妬するけど、俺だってするんだぜ」


「え…?本当…?」


「お前をやらしい目で見てる連中も大勢居るんだ。ま、見つけ次第制裁してやってるけど」


「嬉しい…」


頬ずりしてきた朧を膝に乗せて抱きしめた氷雨は、若々しく瑞々しい肢体にくらくらしながら太腿を撫でた。


「種族の違う俺たちがこうして夫婦になれたのは奇跡だ。まあ…お前の父ちゃんや兄ちゃんたちにはほんっと煩わされたけど」


「ふふ、みんなお師匠様が好きだからですよ」


「嘘つけ!あれはぜってぇ苛めだ!」


被害妄想の抜けない氷雨に笑みを誘われた朧は、その後も何度か愛してもらって幸せに浸ったまま眠りに落ちた。