氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】

如月はとにかく不器用な娘だった。

本当は母の息吹に甘えたかったのにそれをうまく伝えることができず、悪戯を繰り返しては関心を引こうとして困らせて、結果関心は引いたものの煩わせてしまうという結果に。

それでも息吹はへこたれず、なるべく多くの時間を如月と過ごそうとしたものの、花や茶に全く関心のない如月を御することはできず、最終的に氷雨の手に委ねられて、結果こうなった。


「それで、父様と母様はお元気なのか?」


「もう別々に暮らして随分経つけど元気だぜ。お前こそちゃんと文とか書いてるのか?」


「私はこのように日々忙しい。用がなければ文など書くものか」


朝餉を終えた後、早速如月が現在行っている裏方の仕事の聞き取りを行っていた。

その量といったら――如月の私室で文の山を発見して目を丸くした。


「朔兄様の手を煩わせぬよう雑多な案件は私たち妹弟が捌いている。小さないざこざであればこちらで鎮めている」


「じゃあそういった小さないざこざは主さまの耳に届くことなく処理されてるってことだな?ふうん…」


――氷雨と如月が膝を突き合わせて話をしている姿を少し離れた所から見ていた朧は、万能なふたりのやりとりに笑みが止まらず袖で口元を隠しながらじっと見ていた。


「如ちゃん楽しそうだねえ」


「あ、泉様。でもね、見てると時々…」


「ふんふん、それでこういう時は………おい、俺の尻を触るのをやめろ!」


「この程度で怒るな。お前は生娘か」


「許可なく俺に触んなつってんだろが」


「じゃあお前には何も教えない」


「お、おい…それは困るぞ…」


結局は如月に口で勝つことができず、その様はとても微笑ましくて朧と泉は笑い合って茶を啜った。


「如ちゃんが生き生きしてる。ねえ、長居できない?」


「後で氷雨さんに訊いてみますね」


再びぎゃあぎゃあ声が上がり、朧はまたくすくす笑って飽きもせずふたりのやりとりを見守った。