氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】

如月の私室で布団に包まってほとんど実際会ったことのない姉に思い切り甘えていた朧は、男より男らしいといっては語弊があるが、凛々しい美貌の姉にうっとりしていた。


「お前も気付いているかもしれないが、私には子が居ない」


「でも如月姉様はお幸せそうです。違いますか?」


純粋無垢で何の穢れも知らなそうな朧の問いに、如月は艶やかな長い黒髪を撫でてやりながら氷雨たちには見せないような穏やかな笑みを湛えた。


「そう見えているとすれば…泉のおかげだろうな。あれは私の我が儘を全て聞き入れてくれる。懐の広い男でね」


「泉様もお優しそうで…如月姉様たちを見ていると心がふんわりします」


「泉は頑なに心を開かなかった私を辛抱強く待ち続けてくれた。その年月の長さといったら!あいつは変態だな」


そう悪口を言いながらも如月の口調は穏やかで、この姉の本質を見た気がした朧は腕に抱き着いて目を閉じた。


「お師匠様のこと…今もからかって楽しんでますけど、もういいんでしょう?」


――氷雨に惚れたことである意味能登に島流しされた如月は、にやりと笑って朧の鼻を指で押した。


「まだ惚れていると言ったらどうする?」


「え…っ!?そ、それは困りますっ!お師匠様はもう私のものですから!」


「はははっ、冗談だ冗談。雪男のことはもう随分前にどうでもよくなった。まあそうは言ってもあれをからかうのは面白いからこれからも続けるぞ」


「お手柔らかにお願いしますね」


ほっとして笑った朧の笑顔に癒された如月は、頬杖を突いてさらににやり。


「さあのろけ話を聞いてやるぞ。好きなだけ話すがいい」


「本当ですかっ?私、如月姉様ののろけ話も聞きたいっ」


「ふむ、ここだけの話にしておいてくれよ」


そして夜通し話して、姉妹の絆をさらに強いものとした。