雪男雪女は戦闘種族ではなく、刀を持つことなど論外であり、里で氷雨は奇異の目で見られていた。
雪月花を顕現させることができたのは、常に帯刀できてなおかつ視認できないようなものーー水や氷を使って大気中に紛れ込ませることができたならばどんなに便利だろうかと四苦八苦して得た力であり、そこまで到達するのに長い時を要した。
けれど雪月花を振るうと対峙したものは何かしらの変調を訴えて塞ぎ込むことが多く、まともに戦うことができない。
悪い幻を見れば死にたいと声を上げ、良い幻を見れば何故現実に引き戻したのかと責められる。
だから長い間対峙せず雪月花を顕現させたら速度で以って斬りつけて敵を屠ってきた。
「雪月花…お前とはちゃんと向き合ったことがなかったかもしれないな。だけど俺の相棒だ。お前を責められるのはつらい」
だから自分の都合の良い幻ばかり見せてくれというのは勝手すぎるけれど、物言わぬ雪月花を水平に構えて目を閉じて語りかけているうちに、真っ暗だった視界にうっすら白い光りがあたったような気がした。
『何を望む?』
「!雪月花…俺たちの前に立ってるあの男は敵だ。だけど…優しい幻を見せたまま逝かせてやりたいんだ」
『我に自我が芽生えたのはそなたのおかげとも言える。手助けはしてやろうが、我を御したとは思わぬが良い。我に見合わぬと判断すれば、もうこうして願いを叶えることもなかろう』
「分かった。ありがとう、雪月花」
ーー雪月花に自我が芽生えた。
と同時に氷雨はすうっと目を開けて静かに頭上に雪月花を振り上げた。
それまで流水と対峙していた朔が阿吽の呼吸で氷雨の前まで流水をおびき出した。
氷雨の何かが変わったーー
新たな力を得ていた。
雪月花を顕現させることができたのは、常に帯刀できてなおかつ視認できないようなものーー水や氷を使って大気中に紛れ込ませることができたならばどんなに便利だろうかと四苦八苦して得た力であり、そこまで到達するのに長い時を要した。
けれど雪月花を振るうと対峙したものは何かしらの変調を訴えて塞ぎ込むことが多く、まともに戦うことができない。
悪い幻を見れば死にたいと声を上げ、良い幻を見れば何故現実に引き戻したのかと責められる。
だから長い間対峙せず雪月花を顕現させたら速度で以って斬りつけて敵を屠ってきた。
「雪月花…お前とはちゃんと向き合ったことがなかったかもしれないな。だけど俺の相棒だ。お前を責められるのはつらい」
だから自分の都合の良い幻ばかり見せてくれというのは勝手すぎるけれど、物言わぬ雪月花を水平に構えて目を閉じて語りかけているうちに、真っ暗だった視界にうっすら白い光りがあたったような気がした。
『何を望む?』
「!雪月花…俺たちの前に立ってるあの男は敵だ。だけど…優しい幻を見せたまま逝かせてやりたいんだ」
『我に自我が芽生えたのはそなたのおかげとも言える。手助けはしてやろうが、我を御したとは思わぬが良い。我に見合わぬと判断すれば、もうこうして願いを叶えることもなかろう』
「分かった。ありがとう、雪月花」
ーー雪月花に自我が芽生えた。
と同時に氷雨はすうっと目を開けて静かに頭上に雪月花を振り上げた。
それまで流水と対峙していた朔が阿吽の呼吸で氷雨の前まで流水をおびき出した。
氷雨の何かが変わったーー
新たな力を得ていた。

