小さな手だがちゃんと鋭い爪があり、赤子の目を見た流水は――その目に自我の光が宿っているのを見て戦慄した。
綾乃が無傷なのに息も絶え絶えなのは…我が子が無意識から‟鬼憑き”としての力を発動したからだろう。
人で――人でなければ、綾乃はこの影響を受けることはなかった。
だが、これではもう…
「流水…さん…私…死ぬの…?」
「…死ぬ」
「村は…村の人たちは…」
「元凶の小鬼は殺した。…そんなのはどうでもいい!綾乃…」
抱き起こしたもののまた我が子から引っ掻かれたが、流水は意に介さず綾乃の目から光が消えてゆこうとしているのを見ていることしかできなかった。
「この子は…悪く…ないんです…」
「!綾乃…お前気付いていて…」
「少しずつ…記憶があやふやになって…疲れやすくなって…おかしいなって…思ってました…」
そう言いながらも何故か満足げな表情を浮かべている綾乃の優美な笑顔に、もう今生には悔いがないという色を見た流水は、首を振って強く綾乃を抱きしめた。
「まだ…まだ駄目だ…!」
「流水さん…この子を…この子をお願い…」
「綾乃、俺は――」
何とか綾乃の意識を引き留めようと躍起になっていた時――急速に何かが近付いて来る気配を感じた。
それは小物の気配ではなく、しかもとんでもなく強い妖気を感じて思わず背筋が伸びた流水は、それが複数であるのを感じると、綾乃をそっと横たえさせた。
「少し待っていろ、必ず戻って来るから…」
この惨状では恐らく自分がやったのだと疑われてしまう。
まずは相手が何者なのかを見定めないと――
「この妖気の強さ…一体何者だ…!?」
綾乃から離れ難いのに、苛立ちながらその場を素早く離れた。
綾乃が無傷なのに息も絶え絶えなのは…我が子が無意識から‟鬼憑き”としての力を発動したからだろう。
人で――人でなければ、綾乃はこの影響を受けることはなかった。
だが、これではもう…
「流水…さん…私…死ぬの…?」
「…死ぬ」
「村は…村の人たちは…」
「元凶の小鬼は殺した。…そんなのはどうでもいい!綾乃…」
抱き起こしたもののまた我が子から引っ掻かれたが、流水は意に介さず綾乃の目から光が消えてゆこうとしているのを見ていることしかできなかった。
「この子は…悪く…ないんです…」
「!綾乃…お前気付いていて…」
「少しずつ…記憶があやふやになって…疲れやすくなって…おかしいなって…思ってました…」
そう言いながらも何故か満足げな表情を浮かべている綾乃の優美な笑顔に、もう今生には悔いがないという色を見た流水は、首を振って強く綾乃を抱きしめた。
「まだ…まだ駄目だ…!」
「流水さん…この子を…この子をお願い…」
「綾乃、俺は――」
何とか綾乃の意識を引き留めようと躍起になっていた時――急速に何かが近付いて来る気配を感じた。
それは小物の気配ではなく、しかもとんでもなく強い妖気を感じて思わず背筋が伸びた流水は、それが複数であるのを感じると、綾乃をそっと横たえさせた。
「少し待っていろ、必ず戻って来るから…」
この惨状では恐らく自分がやったのだと疑われてしまう。
まずは相手が何者なのかを見定めないと――
「この妖気の強さ…一体何者だ…!?」
綾乃から離れ難いのに、苛立ちながらその場を素早く離れた。

