女はどうやら機織りを生業としているようだった。

屋内からはひっきりなしに機を織る音がしていたのだが――外に出てくることはあまりない。

あばら家の隣に小さな畑があり、そこで実った痩せた野菜を収穫しては食っているようで、あれでは痩せてゆく一方なのではと何故か気になるようになった。

だから…仕方なく、また山菜を採って家の前に置くことにした。

いつも疲れた顔をしていた女がその山菜を軒下で見つけると、やはり不審に思われて辺りをきょろきょろしていたが誘惑には抗えず、頭を下げて家の中へ消えてゆく――

そんな日々を見ているうちに、顔色の悪かった女の表情がみるみる良くなり、血色も良くなると、なんともいえない満足感を味わえた。


女は元々可愛らしい顔をしていたから、食で満たされると野良仕事をする中でも時折笑顔をみせるようになり――


「笑うようになったか。次は肉を食わせるとどうなるだろうか?」


興味は尽きず、次は獣を狩って与えてみようと思い立った時――深夜にあばら家の戸が開いた。

いつもは寝ている時間のはずなのに、一体どうしたのかと息を詰めて見ていると、女は辺りを警戒してそっとあばら家を離れた。

気配を押し殺しながら後を追い、女がある家の中へ消えて行った。

それはこの村で一番大きな家で、女が時々そこから食べ物を分け与えてもらっていることは知っていた。


「腹が空いているのか?ならばもっと…」


もっと与えないと思って出てくるのを待ったが、女は夜明け前まで出てくることはなく、しびれを切らして中まで様子を見に行こうとした時――出て来た。

疲れ切った顔をして出て来た女は手ぶらで、訝しんだ。

一体何をしにここを訪れたのだろうか、と。

すでにその頃――流水は女の存在に捉われて、自制が利かず、また女の跡を追って目をぎらつかせた。