朔は朧の衰弱をなんとか食い止めようとして、百鬼たちにそれぞれの種族で万病に効くものを入手してくるよう命を出した。
なによりも朧自身が己を疑い、疑心暗鬼になって不安に陥っていることが憂慮され、それについては精神を落ち着かせる薬を晴明が処方し、独りにさせないよう如月や氷雨が始終付き添った。
「このお味噌汁…海の香りがする」
「あーそれな、お前がちょっと住んでた家の近くの海で採れた若布らしいぜ」
「え?私、海の近くになんて住んだことありません」
「ん?いやいや、家に立て籠もって入れてくんなかったじゃん。…憶えて…ないのか?」
朧の箸が止まり、みるみる顔面蒼白になった。
氷雨もまた朧の記憶がまた曖昧になっていることに胸が痛んだが、優しく頭を撫でてにかっと笑った。
「ま、あれは憶えてなくてもいっか。息吹に熱い茶を淹れてもらって来る」
「氷雨さん…」
「そんな顔すんなって。きつかったら横になってろよ」
如月にその場を任せて部屋を出た氷雨は、思わず深いため息をついてしまってそれに自身が驚きつつ、息吹を訪ねた。
「あっ雪ちゃん!朧ちゃんはどう?」
「ん、今日は調子良さそう。だけどさっきは…いや、なんでもない」
息吹は普段快活な氷雨がその美貌を曇らせてはにかんでいるのを見て袖を握って軽く揺さぶった。
「雪ちゃん…諦めないでね?朧ちゃんのこと…」
「ははっ、諦めたりしないって。それより俺も母さんに万病に効く薬がないか訊いてみるよ」
熱い茶を淹れてもらい、それを運びながらいつか存在自体を忘れられてしまうのではという恐怖がじわりと芽生えて首を振った。
「しっかりしろ、俺」
何度も繰り返した。
なによりも朧自身が己を疑い、疑心暗鬼になって不安に陥っていることが憂慮され、それについては精神を落ち着かせる薬を晴明が処方し、独りにさせないよう如月や氷雨が始終付き添った。
「このお味噌汁…海の香りがする」
「あーそれな、お前がちょっと住んでた家の近くの海で採れた若布らしいぜ」
「え?私、海の近くになんて住んだことありません」
「ん?いやいや、家に立て籠もって入れてくんなかったじゃん。…憶えて…ないのか?」
朧の箸が止まり、みるみる顔面蒼白になった。
氷雨もまた朧の記憶がまた曖昧になっていることに胸が痛んだが、優しく頭を撫でてにかっと笑った。
「ま、あれは憶えてなくてもいっか。息吹に熱い茶を淹れてもらって来る」
「氷雨さん…」
「そんな顔すんなって。きつかったら横になってろよ」
如月にその場を任せて部屋を出た氷雨は、思わず深いため息をついてしまってそれに自身が驚きつつ、息吹を訪ねた。
「あっ雪ちゃん!朧ちゃんはどう?」
「ん、今日は調子良さそう。だけどさっきは…いや、なんでもない」
息吹は普段快活な氷雨がその美貌を曇らせてはにかんでいるのを見て袖を握って軽く揺さぶった。
「雪ちゃん…諦めないでね?朧ちゃんのこと…」
「ははっ、諦めたりしないって。それより俺も母さんに万病に効く薬がないか訊いてみるよ」
熱い茶を淹れてもらい、それを運びながらいつか存在自体を忘れられてしまうのではという恐怖がじわりと芽生えて首を振った。
「しっかりしろ、俺」
何度も繰り返した。

