晴明の煎じた薬はよく効果を発揮して、朧はまたすぐ眠ってしまった。
その間氷雨はずっと傍に居たのだが――やはり望が気になって揺り籠を覗き込むと、先程まで大泣きしていたのに朧が眠ると同時に眠ってしまったようで、氷雨は小さく唸った。
「揺り籠から足がはみ出してる…。やっぱり大きくなってるな」
急激な成長。
確かに半妖の成長は速いが、尋常ではない速さの気がしてもっとよく見ようと抱き上げようとした時、部屋に十六夜が入って来た。
「先代…」
「…腑抜けた顔をしている。お前まさかまた朧から逃げようとしているんじゃないだろうな?」
「え…いや、そんなことは…」
「お前は俺の大切な娘の婿なんだ。何があろうと朧を守ると誓ったな?…よって離縁は許さない。朧を避けることも同様に許さん。もし誓いを破ったら…俺がこの手でお前を殺す」
言霊が刻まれたその宣言に氷雨の背筋は泡立ち、姿勢を正すと十六夜に深く頭を下げた。
「ごめん、怖かったんだ。朧が俺を忘れてしまうんじゃないかって…」
十六夜は不安を吐露する氷雨の傍に座ると、無表情のまま何をそんなに思い悩むのかと半ば眉を潜めて氷雨の襟首を掴んで顔を上げさせた。
「忘れられたら、また惚れてもらえるよう努力すればいい。何度忘れられたとしても真にお前に惚れていたら何度でも恋をする。…ふん、下らないことを言わせるな」
「先代…そう…だよな、うん…努力するよ俺」
本来は犬猿の仲の氷雨に助言をする羽目になった十六夜が舌打ちをして部屋を出ていくと、氷雨は自身の誓いを新たに強くして、目下朧の体調に気を配ることにした。
「ずっと傍に居るよ。夫婦ってそういうもんだろ?」
朧の頬を手の甲で優しく撫でて、朧が起きるまでずっと傍に居続けた。
その間氷雨はずっと傍に居たのだが――やはり望が気になって揺り籠を覗き込むと、先程まで大泣きしていたのに朧が眠ると同時に眠ってしまったようで、氷雨は小さく唸った。
「揺り籠から足がはみ出してる…。やっぱり大きくなってるな」
急激な成長。
確かに半妖の成長は速いが、尋常ではない速さの気がしてもっとよく見ようと抱き上げようとした時、部屋に十六夜が入って来た。
「先代…」
「…腑抜けた顔をしている。お前まさかまた朧から逃げようとしているんじゃないだろうな?」
「え…いや、そんなことは…」
「お前は俺の大切な娘の婿なんだ。何があろうと朧を守ると誓ったな?…よって離縁は許さない。朧を避けることも同様に許さん。もし誓いを破ったら…俺がこの手でお前を殺す」
言霊が刻まれたその宣言に氷雨の背筋は泡立ち、姿勢を正すと十六夜に深く頭を下げた。
「ごめん、怖かったんだ。朧が俺を忘れてしまうんじゃないかって…」
十六夜は不安を吐露する氷雨の傍に座ると、無表情のまま何をそんなに思い悩むのかと半ば眉を潜めて氷雨の襟首を掴んで顔を上げさせた。
「忘れられたら、また惚れてもらえるよう努力すればいい。何度忘れられたとしても真にお前に惚れていたら何度でも恋をする。…ふん、下らないことを言わせるな」
「先代…そう…だよな、うん…努力するよ俺」
本来は犬猿の仲の氷雨に助言をする羽目になった十六夜が舌打ちをして部屋を出ていくと、氷雨は自身の誓いを新たに強くして、目下朧の体調に気を配ることにした。
「ずっと傍に居るよ。夫婦ってそういうもんだろ?」
朧の頬を手の甲で優しく撫でて、朧が起きるまでずっと傍に居続けた。

