《冗談ばっかり言ってないで授業に集中する!》


そんな返事を書いてから思ったのは、先生の声も聞こえてこないくらい、授業に集中出来ていないのは私の方かもしれないってこと。


あーあ、ただでも苦手な現文を、今日の授業でさらに遅れを取ったに違いない。

だって、さっきから先生の話は右から左に流れていくし、板書すらろくにしてない。


杉浦くんの教科書を元の位置へと戻してから、自分のノートに視線を落とすけれど、

黒板と照らし合わせてみても、私のノートには黒板の3分の1ほどしか書き込まれていない。


多分それは杉浦くんも同じはず。
それなのに杉浦くんと来たら、相変わらずノートではなく、教科書へと何やら書き込んでいる様子だ。


何を書いてるのか気になって覗き込みたくなる衝動を必死に堪えるけれど、今回のターンは中々教科書が返ってこない。


───あー、もう!


何で私は杉浦くん相手にこうも一々ドギマギしているんだろう。


一瞬、動きを止めた杉浦くんの手は、何かを考えるようにシャーペンで教科書にトントントン、と3回リズムをとった……。


かと思えば、再びスラスラ何かを書き足し始める。

そして、何やら書き終えたらしい杉浦くんは、教科書を元の位置へと戻した。