こんなことなら、教科書なんて見せてもらわなければ良かった!!と、今さらすぎる後悔まで始める始末だ。


───ガタンッ


不意に小さく揺れた机に、杉浦くんへと意識が集中していた私の肩がビクッと跳ねた。


私と杉浦くん、2人の机のちょうど真ん中に置かれていた教科書が、あろう事かヒョイッと杉浦くんの机に引っ張られていってしまった。


私は口を半開きにしたまま、教科書を目で追うけれど、きっと今、またしても華麗なる間抜け面を披露していると思う。

教科書を自分の机へと引っ張っていった杉浦くんは、そのまま教科書の隅っこに何やら書き込み始めた。


あー、話ちゃんと聞いてなかったけど、先生がマーカーの指示とか出したのかな?

……意外と真面目なんだ、杉浦くん。


なんて、勝手に解釈して杉浦くんを見直していた私の元に再びススッと戻ってきた教科書。


どれどれ?ちなみにマーカーはどこかな?と、呑気に教科書を覗き込めば、


「っ~~!?」


そこに書かれている文字に思わず目を見開いた。

ゆるっと書かれた"それ"は、男の子の割には丸文字で、言ってしまえば女の子みたいな可愛い字。

なのに……、


《さっきから俺のこと、見すぎ》

書いてある言葉は、いつも通りどこまでも俺様男子を極めた杉浦くんらしいものだった。


なに?これが俗に言うギャップ?
ギャップ萌え狙ってるわけ?