杉浦くんの体温が離れたことによって急に寂しさに襲われた私は、無意識に杉浦くんのブレザーの袖をギュッと握りしめた。

そんな私に「急に可愛すぎて反則だろ」って、杉浦くんは困った顔して笑うけど、

それを言うなら杉浦くんだって、急に甘すぎて反則だと思う。


「春奈」


───っ!


名前を呼ばれてと顔を上げれば、まともに返事をする隙も与えずに、唇に柔らかくて温かいものが触れた───。


ほんの一瞬、触れるだけの優しいキス。


「ず、ズルい!今の不意打ち……!」

「嫌いじゃねぇくせに」

ベッと、小さく舌を出して、やっぱり意地悪く笑う杉浦くんには、確かに嫌いじゃないって思ってることは……絶対に教えてあげない。


「……春奈」

「……今度はなに?」


来年18歳を迎える私の王子様は、白馬になんて乗っていなかった。


おまけに俺様で、ちょっと自意識過剰で、

好きな女の子には意地悪しちゃうようなお子ちゃま男子。


そんな、おとぎ話に出てくる理想の王子様とは程遠い王子様だったけれど。


「ずっと、俺だけ見てろよ」

「杉浦くんも、ね」

「俺には最初から、春奈しか見えてねぇよ」



ずっと、こんな意地っ張りな私だけを見ていてくれた

───きっと、最初で最後の運命の人。


【END】