「どうする?見んのか、見ねぇのか」


でも、待てよ?

私は1番窓側の席で、左隣はいない。

つまり……教科書を見せてもえるとしたら右隣の杉浦くんだけという事になる。


杉浦くんに見せてもらわなきゃ、授業についていけないそれどころか、万が一、先生に当てられでもしたら……地獄すぎる。

とは言え、だ。


杉浦くんに見せてもらうのはリスクが高すぎる。それはそれはデンジャラスだ。

なぜなら、杉浦くんはいつも私にだけこの上なく意地悪だから。


「……いいの?」


杉浦くんに疑いの眼差しを向けながら、机を寄せようか迷っている私に、


「ほら」


突然、差し出されたのは骨ばった大きな杉浦くんの手。


その手を見ながら、半ば反射的に「え?」と漏らした私はきっと間抜け面全開だと思う。


「……お手」


言いながらニッと意地悪く笑った杉浦くんの顔は、こんな時だって言うのに驚くくらい整っていて、それがまた、私には腹立たしくて仕方ない。


「あのね、犬じゃないんだからお手なんて」

「なら、教科書見なくていいんだな?」


───うぅ

17年間生きてきて、自慢じゃないけどこんなに歪んだ人を見たことはない。


この稀に見る意地悪っぷり!ここまで来るともはや意地悪って言うよりも、いじめだ。