わたしのいじわる王子さま

「……また、私のことからかってるの?」

「は?俺はいつも本気だったけど」

「え?」

「俺の本気を勝手に冗談にしてんじゃねぇよ」


不機嫌そうな顔で、不機嫌そうな声を出す杉浦くん。

本当に……本当に杉浦くんは、私のことが好きだったの?

私には意地悪ばかりするあの杉浦佑太が?


「言っとくけど俺、春奈のことしか見てねぇよ」


俺様で、いたずらっ子で、私には笑ってくれたことすらないあの杉浦くんが、

私だけを見てくれていたなんて……


そんなの、夢の中でしかありえないと思っていた。


杉浦くんの言葉に、単純な私はすぐ浮かれてしまいそうになる。


「私も……」と言いかけて、ふとさっき杉浦くんが彩帆ちゃんと一緒だったこと思い出した。


「で、でも!さっきも一緒にいたじゃん。……彩帆ちゃんと」


そうだよ、彩帆ちゃんと会ってたじゃん。

仲良さげに、『佑くん』なんて呼ばれて楽しそうに話してたの見たんだから。


「なに、妬いてんの?」

「ち、違っ……!」

「ほんと、春奈は素直じゃねぇよな」


クスッと笑う杉浦くんは尚も楽しそうに笑っていて、私は全然面白くない!と軽く頬を膨らませた。


「……幼なじみ。俺と彩帆は幼稚園から一緒なんだよ」

「幼なじみ?」

「ん。だから今さら振った振られたくらいで関係が壊れたりすることはねぇの」


……幼なじみ。
彩帆ちゃんは杉浦くんと昔からずっと一緒なんだ。


てことは、私の知らない杉浦くんを、きっとたくさん知ってるんだろうな。