わたしのいじわる王子さま

やけに真剣な杉浦くんの顔から、目が離せない。


「好きな子ほど、いじめたくなる」

「えっ……?」

「……って、よく言うじゃん?」


目尻に溜まっていた涙がツーッと頬を伝う。

それを親指でぐいっと乱暴に拭う杉浦くんがまた、いたずらっ子みたいに笑った。


「そんなの、小学生だよ」


ううん。
今どきの小学生ってすごく大人びているから、きっと好きな子に意地悪したりしないと思う。


それに、今どきの小学生の方がもっと、ずっと器用に恋愛しているかもしれない。


「おまえの気ぃ引きたくて、保留中なんて言ったけど、彩帆には告られた日にちゃんと断ってたし」

「う、嘘だ……」


あかね色に染まる空が、だんだんと藍色に移り変わる。


3月の風はまだ少し冷たくて、杉浦くんと繋がれている右手だけがやけに温かい。


「言ったじゃん。俺はおまえが好きだけど?って」


───ドキッ


繋いだ手をグッと引き寄せられて、縮まる杉浦くんとの距離に心臓はこれでもかってくらい早くビートを刻む。


もう降参だ。
今にも心臓が壊れてしまいそう。


「……なんで疑問形なの」

「んー。俺なりの、照れ隠し?」

「ま、また疑問形。……今のも杉浦くんなりの照れ隠し?」

「まぁ、そんなとこ」


つい30分前の私には、予想もつかないような今の状況に、まだ杉浦くんの言葉を信じきれていない私がいる。