周りの友達に言うと、

みんな口を揃えて「春奈は少女マンガの読みすぎ!」とか「白馬の王子とか、実際に迎えに来たら絶対笑っちゃう」なんて、腹を抱えて笑うけど。


割と本気で王子様の迎えを待っている私としては、その度、胸に深く刺さるものがある。


いいんだよ。
この際、白馬に乗ってなくても、白タイツを頭から被ってたって、100円均一に売ってそうな安っぽい剣を腰からぶら下げて、フェルト生地で出来たダサい王冠頭に乗っけてたって。


それが私の王子様なら、ちゃんと受け止める覚悟くらい……って。

白馬の王子様について熱く語っている場合じゃなかった。


今、私が最優先にすべきことは現文の教科書を手に入れること!


……だけど、授業開始まであと1分しかない今、隣のクラスに借りに行くのは時間的にかなり無理がある。


だからと言って、隣の席に見せてもらうのはとても気が引ける……。


恐る恐る隣の席へと視線を向ければ、

───バチッ


不意に視線がぶつかって、思わずギョッと目を見開く。


「見せてやろうか?教科書、忘れたんだろ?」

「……!」


隣の席の杉浦佑太は、机に頬杖をついたまま、ニヤリと口元を緩めた。


あぁ、見られてしまった。

私が現文の教科書を忘れてアタフタしていた一部始終を……寄りによって、こんな悪魔に見られてしまうなんて。