思わずビクッと肩を揺らした私が声の主へとゆっくり顔を向ければ、そのまま交わる視線。

カァッと一瞬で熱を持つ、頬。


「いいの?」

「……え?」

「春奈は俺が誰かに取られても、いいの?」

「……なっ」

何だそれ。
杉浦くんはどこまで自意識過剰なんだろう。

こんな発言、俺様杉浦くんにしか到底できないと思う。


だって、相手が自分に100%気がある!って確信してるか、よっぽどの自信がない限り口に出来ないもん。

いや、むしろ100%気があるって確信してたとしても、普通は言えないと思うんだけど。


「……他の女に好きだって、言ってもいいわけ?」


───ドクン

せっかく授業に集中しようと頑張っていたところだったのに、私の頭の中はまたしても杉浦くんのことでいっぱいになってしまった。

杉浦くんが他の子にどんな感情を抱いて、どんな言葉にして伝えても、

それに対して私はとやかく言えた立場じゃない。


なのに、どうして私にそんなこと聞くの?


「……そ、そんなの、杉浦くんの好きにすればいいじゃん」


咄嗟に出た声は、自分でも分かるくらいに冷たさを含んでいて、何を考えているのかサッパリ分からない杉浦くんの瞳が

微かに揺れたような気がした。


そんな杉浦くんの視線から逃げ出したくなって、慌てて視線を外すけれど……


「春奈、こっち見ろよ」

「っ、な……んで」


ギュッと握られた右手。
伝わる杉浦くんの体温。

授業中だって事も忘れて、言い訳もできないくらい……


───私、杉浦くんにドキドキしてる。