「で?その可愛い子とはやっぱ付き合ったわけ?」

そんな松井くんの言葉に、一瞬ヒヤッとした。

……聞きたいけど聞きたくない、そんな矛盾した自分の気持ちがグルグルと脳内を駆け巡る。


でも、ドキドキと治まることを知らない私の心臓は『早く』と、まるで杉浦くんの言葉を急かしているみたいだ。


「……んー、保留中?」

「はぁ?何っだそれ!!誰か気になるやつでもいるわけ?」


そんな私の気持ちなんて知るはずもない杉浦くんは、松井くんに淡々とした口調で答えた。


ホッとした気持ちと、断らなかったんだ……って言うモヤモヤが同時に私を襲う。

さっきから感情が大渋滞を起こしていて忙しい。


───ん?待って?


この前から私おかしくない?
……これじゃあ、まるで私が杉浦くんのことを好きみたいじゃん。


あー、もう!先生の話に集中、集中!


杉浦くんと松井くんの会話に意識が向いているから、色々と考えてしまうのだ。


そう思い直して深く息を吸って吐いた。改めて見上げた黒板は、私が板書していた部分から随分と先に進んでしまっていた。

急いでノートを取らなければ!と、シャーペンを握り直せば、自然と耳に入ってくる先生の声。


なんだ、意外とすぐに切り替えられるもんなんだ。
なんて思っていた矢先に───。

「なぁ、春奈」

「っ!?」


隣から鮮明に聞こえた私を呼ぶ声。