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大嫌いな日本史の授業真っ只中の今、日本史オタクか?と思うほど日本史を愛する担任の話に耳を傾けていた私は……


「佑太お前、結局どうなの?」

「あ?」


後ろの席の松井くんに声をかけられた杉浦くんが、体を私側に向けて後ろを振り向いたことによって、完全に意識が担任から杉浦くんへと移ってしまった。


「ほら、一昨日告られたんだろ?何だっけ?1年の……」

「あー、彩帆?」


───ドクン


「あー!そうそう、1年の中で1番可愛いって評判じゃん?」


杉浦くんが女の子を名前で呼んだ。
ただそれだけなのに、心臓が嫌な音を立てながらモヤモヤした得体の知れない黒い感情に包まれていく。


杉浦くんに下の名前で呼ばれてる女子は……私だけだと思っていた。


だって今まで、他の子を名前で呼んでるところなんて聞いたことがなかったから。


『春奈』


たけどそんなの、ただの自惚れだったみたい。

杉浦くんが名前で呼ぶ女の子は私だけなんて……勘違いにも程がある。


おまけに、

「まぁ、可愛いんじゃねぇの」


聞こえてきた杉浦くんの言葉にも、強くダメージ受けている自分に気づく。


やっぱり、杉浦くんから見ても可愛いんだ……あの子。


いや、そりゃ女の私から見ても可愛いいんだから、当たり前なんだけどさ。

……なんでだろう。


杉浦くんの好きなタイプじゃなければいいのにって、心のどこかで思ってた。