いくら意地悪杉浦くんが相手とは言え

さすがに『キライ』と本人に告げるのは心苦しいものがある。

あわよくば、わざと文章の最後に書き足した顔文字が『キライ』の3文字を和らげてくれたらいいな……。


まぁ、きっと私に『キライ』って言われたくらいで、落ち込んだり、傷付いたりするような杉浦くんじゃないのだけれど。


───スッ

教科書を机の真ん中へと戻しながら、もし「私も好き」と書いていたらどうなってたんだろう?とか、

もし本当に杉浦くんが私のこと好きでいてくれたら?……なんて考えてしまうのは、


やっぱり少女マンガの読みすぎに違いない───。



***


あの後、杉浦くんが再び教科書に書き込むことはなかった。


やっぱり、からかわれてたのかなって、ぼんやりしているうちに授業は終わってしまった。


何事も無かったみたいに教科書を自分の机の中へと放り込んだ杉浦くんを横目で見ながら、


早くお礼を言わなくちゃ……と思っている私は声をかけるタイミングが掴めずに挙動不審を極めている。


先に机を元に戻してしまったばっかりに、今さら声をかけるのが気まずくなってしまった。

ましてや、冗談でもあんなこと言われた後だし……変に意識してしまう。


やっぱり、黙ってたって杉浦くんは今世紀最大にかっこいい。