私たちは、いつも、4人だった。
バラバラになるなんて、想像すら……してなかった、わけではない。
『千穂(ちほ)』
そうやって呼ぶ、彼の声が……なんだか、甘くて優しかったのとか。
『バカだなぁ』
やわらかそうな千穂の茶色い髪を、くしゃくしゃと……大きな、骨ばっている手がなでているのとか。
『いる?』
お気に入りの、ラムネの飲み物を、千穂にあげようとするところとか。
多分、全部。
崩れる、前ぶれだった。
1日に数ミリずつズレていって、最終的には大きな脱線事故になる。
夏の暑さが、じっくりとむしばんでくる。
夏。私たちの青春が、なにかにねらわれていた。