私を好きになってくれた理由は、わからない。



だけど、いつも『私なんか』と言っていた私に、



『お前を好きになった俺が悪趣味みたいじゃん』



と、ケラケラ笑った山田が、あまりにも格好よくて。



私だって、山田が好きなのだと。言葉にしてしまいたかった。



だけど、声にしようとすると、あまりにもドキドキして。苦しくて。



ますます、山田がわからなくなった。



こんなに怖いことを、何度もできるなんて。と。



なにより、壁があった。



クラスの中心の山田と、休み時間は常に窓の外を眺める私とで。



山田が私の方へ来ようとしてくれたこともある。



だけど、他の人からの目が怖くて、逃げてしまったのだ。女子トイレという、山田から逃げる最高の場所へ。