ゆっくり立ち上がって、とん、と彼の肩に寄りかかった。

そして、試験会場へ向かう方向、そろりそろりと私を支えながら歩いてくれる……けれど。



「あの」

「ん?」

「私に構ってたら、試験に遅れちゃう……」



優しいひとは損をするなんてよく言うけれど、そんなのおかしいって思う。優しいひとこそ報われるべきだ。

だから、私を助けてくれたおかげで、彼が……なんてことにはなってほしくないの。絶対。



「大丈夫」

「でも」

「ゆっくり歩いたってきっと間に合うし、だめでも説明すればわかってくれるよ」



きっとそれは簡単なことじゃないのに、それでも穏やかな声で安心させるように言ってくれるから。

結局、甘えてしまう。



「なんとかなるって」

「そうかな……?」

「うん。頑張ってきたんだし」



まだ体調はぜんぜん万全じゃなくて、でも、ほんとうになんとかなるような気がしてくるから不思議だ。

そろりそろりと歩いて、やっとのことで試験会場まで辿り着いて。私のことを、保健室まで連れて行ってくれる。