しのみ……ちがった、朝陽くんの声で、私の、名前。



光莉、なんてそんなに珍しくもない、生まれてから何千、何万、何億回と呼ばれてきた名前なのに、朝陽くんの声がなぞるだけでこんなにちがうの?



あなどってた、これは、やばい。



自分が呼ばれてみてはじめて、朝陽くんが茹でダコみたく真っ赤になった理由がわかる。

たぶん、今私たち合わせ鏡みたいに同じ顔してる。



「光莉、っていい名前だなって、ずっと思ってた」



呼んでみたかったんだ、って屈託なくわらう朝陽くん。


ジカジョーって笑われてもいいよ、だって、そんな気がしたんだ。朝陽くんのぜんぶが、いとしい、って言ってるみたい。



お砂糖みたいに、わたあめみたいに、あまくてあまい。

夢見心地、みたい。




それで、だから。

朝陽くんの言葉を借りるなら────魔がさした。



ぐい、と欲しがるままに、身を乗り出して、重ねたのは。




「っ、ん」