だから、そのことで篠宮くんが罪悪感を抱えているのなら、そんなの全然お門違いなのだ。
罪ほろぼしのためにサッカーを辞めるというのなら、それは、誰のための贖罪なの。
そんなこと、誰ひとりとして望んでいないんだよ。
篠宮くんは。
篠宮朝陽というひとは、優しすぎる男の子だ。
それは篠宮くんの最大の長所であり、だけど優しすぎるがゆえに、いとも簡単に自分を犠牲にしてしまえる。
それは、篠宮くんの欠点、なのかもしれない。
全部自分のせいにして、勝手に背負いこんでしまう。
誰も責めてはいないのに、自分で自分を責めて、それで自己完結してしまうの。
そんな篠宮くんには誰の言葉も届かなくなっていた。
それは綺麗に見えて、全然────。
もしも、お兄ちゃんがそれを望んでいたのなら、また少し違ってくるかもしれないけれど、お兄ちゃんはそんなこと全然望んでいない。少しも気にしていない。
だったらその優しすぎる自己犠牲には、きっと何の意味もない。
そのことに、気づいてほしかった。
それが、今日伝えたかったことの、1つ目だ。



