「……じゃあ」
私の唐突なジンクスの話を聞いた篠宮くんは、何を思ったか、手にもった制汗剤のボトルから、キャップをくるくると回して取り外し始めて。
そんな篠宮くんをきょとんと見つめていると。
「交換する?」
「えっ」
差し出されたイエローのキャップ。
戸惑っているはずなのに、なぜか反射的に手を出してしまう。
すると、篠宮くんが私の手のひらにそのキャップを乗せた。
「え……、え!?」
交換、って。
うそ、本当にそういうこと……?
にわかに信じがたくて目を白黒させていると。
「ごめん、嫌だった?」
「ちが!……ぅえっ、逆にいいのですか……」
カタコトでぎこちない話し方になってしまう。
ええ、だって。
篠宮くん、ちゃんと私の話聞いてた?
どういうジンクスだったかわかってる?
聞いてなかったよね? もう。
私がいい思いするだけだよ。
「ん。瑞沢の、ちょーだい」
促されるままに、自分の制汗剤からキャップをはずして、篠宮くんに渡す。
イエローのボトルにピンクのキャップ。
ピンクのボトルにイエローのキャップ。
信じられないような気持ちでそれらを眺める。