あの日グラウンドで見た影のある表情と、今の篠宮くんが重なって見えて無意識に手が震えた。


聞いたの、先週の練習試合の話。
ひとつ上の先輩たちが引退してから、篠宮くんが率いる新チームとしてはじめての試合。


稀にみる、大敗だったんだって。


それが全てではないとしても、篠宮くんの不調が輪をかけてひどくなっていたことも原因のひとつだったって。


篠宮くんは取り繕っていたつもりだと思うけれど、気づかないわけがなかった。それからというもの、篠宮くんは教室でも沈んで見える。



そのうち、サッカーを辞める。


予言かのように、そのときが近づいているみたいで、喉の奥が狭くなる。



だけど、私に何ができる？



────私は所詮なにも知らないの。

篠宮くんが、私の怪我を見てそんなにも苦しそうにする理由だって、結局なにもわからないの。



もしも、私がゆんちゃんなら、こもりんなら。

みなみちゃんだったなら、あと一歩踏み込めるのかもしれないけれど。

お門違いなのは承知だけれど。



────羨ましいな。

そう、思ってしまう。