独りよがり、ってどういうこと。
きょとんと瞬きを繰り返す私に、篠宮くんは言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。
「怖くなって、それでそのあとほっとするんだ、いつも」
最低だなって自分でもわかってるけれど、とそう前置いて視線を落とす。
憂いた瞳は私の足元、丁寧に篠宮くんが貼ってくれた湿布に向けられている。
「────俺のせい、じゃなくてよかった、って」
それは、その。
怪我の原因が自分になくて……って意味、だよね。
何も言えずに固まる私に、申し訳なさそうに眉を下げて、篠宮くんは顔を上げる。
グラウンドでは私が抜けてからも、まだ、サッカーの試合が続いていた。
駆け回るクラスメイトたち、その足に触れて操られて軌道を次々と変えていくボール。それらを見つめながら篠宮くんは言葉を繋げていく。
「……俺さ」
「……?」
「サッカー、全然好きじゃない、よ」
嘘だ。
『嘘だ』って叫んでしまいたかった。
だって、好きだって顔をしている。
いつも、今も。
篠宮くんはずっとサッカーが好きだって全身で叫んでいる。
私が知っている、誰よりも。



