「篠宮くん……?」
堪えるような笑い声、右側から。
ダイレクトに耳に入ってきたそれにきょとんと首を傾げると。
「ごめん、タケぽんが見てるってのは嘘」
「嘘……!?」
「瑞沢の反応いちいち面白いから、つい」
つい、なんて言うけれど確信犯にちがいない。
ほんとうにタケぽんに見つかるわけにもいかないので声は上げず、だけどしっかりと肩がふるふる小刻みに揺れている。
声も笑いを噛みころしているせいか、震えているもん。
「もう、本気で焦ったのに……!」
「はは。からかい甲斐があるよな、瑞沢って」
「褒め言葉じゃないでしょ」
「いや? 構いたくなんねって」
ぜったい、これもからかってるんだ……!
もうこの手には乗らないぞ、とふんっと顔を背けると、またくくって笑い声が聞こえてきた。
そんな風に、ゆるゆるぐだぐだ始まった一時間だけど、結論から言えば篠宮くんと机をくっつけて受ける授業はすごくよかった。どうしても、右に意識がいってしまうってことだけを除いて。



