「篠宮くん、面白がってるでしょ……」
「いや?」
「もう、教科書見せないからねっ?」
冗談っぽく頬を膨らませて、まんなかにある教科書をこっちに引き寄せると。
「それはだめ」
「……!」
篠宮くんの手のひらが、とん、とそれを止めた。
むー、悔しいけれど、私の勝ち目なんて少しもないみたいだ。
篠宮くんの一挙一動で簡単に心が浮くの。
「あ、やば」
「え……?」
「瑞沢、タケぽんこっち見てる」
「えええっ」
それは非常に困る。
集中できそう、なんて思っていたくせに、篠宮くんとの雑談にふけっていたせいで、タケぽんの話は完全にBGMと化していた。
それがタケぽんに見つかったあかつきには……!
「私語をつつしめ!そうか、雑談する余裕があるなら、これも解けるよな?あ?」────こうなること間違いなし。やばい。
焦ってぱらぱらとノートを捲って、シャーペンを握る。せめてちゃんとノートを取っているように見えるよう、せかせかと手元を適当に動かす、と。
「くくっ」



