ふう、と息をつく。
落ちつこう、私。
でも。
「めちゃくちゃ集中できそう……」
「なんで?」
ひとりごとのつもりで呟いた言葉に、レスポンスが返ってきてびっくりした。
そりゃそうか、今、篠宮くんとのキョリは吐息さえ聞こえそうなほど近いのだった。
うっかりしている場合じゃない。
「いつも途中で眠くなっちゃうんだけど、今日はね、篠宮くんにむにゃむにゃ寝言を聞かせるわけにはいかないので……!」
「はは、別にいいのに」
「私がよくないのっ。変なこと言っちゃうかもしれないし!」
「たとえば?」
「お腹すいた、とか……コロッケ食べたい、とか?」
ふ、と篠宮くんが笑う。
「食べたいんだ、コロッケ?」
「う、実は」
今、6限目。
お昼ごはんを食べてから、少し時間が経って、じわじわと空腹が侵食してきている。お腹が鳴ったらどうしよう。
そんなことを考えているうちに思考回路が逸れていく。
ころころと表情を変える私を、篠宮くんが頬杖をついて面白そうに眺めていることに、少ししてから気づいてはっと我に返った。



