なんでわかったの、なんて。
それは私が篠宮くんをよく見ているから、にちがいない。
「……?」
きょとんとする篠宮くん。
────篠宮くんの焦ったような呟き声が聞こえたから、教科書忘れたのかな、って。
やばい、これじゃ、ひとりごとまでしっかり聞いている気持ち悪いやつになっちゃう。いや、その通りなんだけど。
『なんでわかったの』
結局その問いには答えず、あははー、って笑って曖昧にごまかす。すると「ごめん、お願い」って篠宮くんが顔の前で手を合わせた。
カタン、とどうしても立ってしまう音。
最小限におさえつつ、篠宮くんと机をくっつける。そして、まんなかに私の教科書をセットした。
「助かる、ありがと」
大したことじゃないのに、しっかり言葉にして伝えてくれる。あったかくて、少し、くすぐったい。
そして、なにより、この距離……!
自分から『教科書見る?』って提案しておきながらなんだけど、近いよ!
普段はそんなこと思わないのに、こうしてくっつけて隣に篠宮くんが座っていると、学校のひとりひとりの机って、けっこう狭いんだなって気づく。
少し大きめに体を動かすだけで、篠宮くんに触れてしまうくらいのキョリだ。



