スパークリング・ハニー



そんなつもりはなくても、吸い寄せられるように。神経が全部、右に向いている気がするほど。


ずっと見ていられる、見ていたい。


気がつくと顔が思いっきり右向きになっていて、我に返って戻すこと多々。先生にバレたら怒られちゃうだろうし、篠宮くん自身に気づかれてしまうのも気恥ずかしいもの。



「うーん……」



隣の席、もいいけれど。
前後っていうのもいいかもしれないなあ、なんて贅沢な妄想が止まらない。


篠宮くんが前の席なら、気兼ねなく、後ろからずっと見ていられるもん。



時計の針が動くのが早い気がする。
一時間、一時間があっという間なの。


早く放課後にならないかなあって思うのがデフォルトだったのに、今はその逆かもしれない。


一秒でも長くなれ、なんて願っている自分がいる。


願ったって時間が都合よく伸びてくれるはずもなく、あっけなく過ぎ去っていき、気づけばもう6限目。



授業がはじまる合図、チャイムの音とともに教室に入ってきたのは数学教師のタケぽんだった。


夏が明けても、タケぽんは相変わらずイカつい顔でオニ怖だ。始まったのは、もちろん数学の授業。