篠宮くんは思いのほか、近くにいて。
夏休みを挟んでしばらくぶりにハチミツ色のその瞳と目が合った。
胸の奥があつくなる。
やっぱり何よりも綺麗だって思うの。
そんな篠宮くんの瞳が私をまっすぐにとらえて、そして、その瞳にふっと優しげな光が宿った。
「なんだ、かわいいじゃん」
「っ、な!」
注がれた視線は目の少し上、ちょうど前髪の位置。
切りすぎたそれをしっかり確認してから『かわいい』なんて口にする。
どこをどう見れば……!
お世辞だとわかっていても、口をぱくぱくさせて戸惑うことしかできない。さながら金魚のよう。
────笑わないで、って前置いたのは私の方だったけれど、こんなことなら。
「笑い飛ばしてくれたほうがよかったかも……」
ぽつり、呟く。
気を遣わせてしまうくらいなら、ネタにした方がよかったかもしれない。
なんて考えていたのに。
「なんで? かわいいのに」
「いいよっ、気を遣わなくて大丈夫!」
篠宮くんは優しいから。
傷つけまいとしてくれているのだろうけれど、さすがにここまで持ち上げてもらえると逆にいたたまれなくなってくる。



