「ただ……?」



うう、隠し通す、つもりだったのに。
でももうこうなったらもうだめだ。



「あのですね、あの」

「……?」

「昨日、気合いを入れてね? 前髪を揃えようとしたら、その、手がすべって悲惨なことになっちゃって。だから、お見せできないの……!」



あまりの羞恥にじわっと頬があつくなる。

勇気を振りしぼって口を開いたというのに、それを聞いた篠宮くんはきょとんと気の抜けた表情を浮かべていた。



「……え、それだけ?」

「う、うん」

「なんだ、そんなことで俺避けられてたの?」

「そんなこと、じゃないよ!一大事件だもん!」



むっと頬を膨らませると、ごめん、って篠宮くんはちょっと笑った。

柔らかい笑み、そこからは安堵が見てとれる。



「そっかー、ほっとした。すげー避けられるから、本気でへこんだし」

「うっ、それはほんとうに申し訳ないです」



ぜんぜん、篠宮くんはなにも悪くない。
私がおっちょこちょいなのが原因だ。



「あの、だから前髪が元通りになったら、ちゃんと前みたいに顔見れるから……」



しばらくは、ごめんねって言おうとして。
だけど篠宮くんがそれを遮った。