「ふは、ふつつかものって」

「だ、だって……!」

「瑞沢ってときどき言葉のチョイス面白いよな」



くすくす、とおかしそうに笑う。
目尻によった皺に、胸の奥がきゅうっとなるなんて、私、どうかしているのかもしれない。



「俺の方こそ、ふつつかものですが」

「な……!ちがうよ!?」



首を振って否定する。
篠宮くんはちがうもん。私に比べて、ぜんぜん。



「瑞沢はいつもすげー持ちあげてくれるけど、俺そんなできた人じゃないんだけどな」

「いやいやいや!」



大げさに身ぶり手ぶりを交えて────とその拍子にうっかり、前髪を隠していたはずの手を動かしてしまった。
はっと気づいて、勢いよく顔を背けると。



「っ!?」



ぐ、と掴まれた腕。
込められた力は強いのに痛くない。その加減ですぐに篠宮くんだとわかる。



「瑞沢、こっち向いて」

「や、えっと」

「いや?」

「ええっと」



いや、とかじゃ……。
いや、嫌なのだけど、それは篠宮くんの方を向くということに対してじゃなくて。

もごもごと口ごもっていると焦れたように篠宮くんが言葉を重ねる。