そして、改めて自分の席。
ええと、隣の席は、と右に目を向けて────。
「っ!?」
動揺。
そのあまり、椅子からすべり落ちそうになった。
……というか実際すべり落ちてしまって。
転ぶのはぎりぎり踏みとどまって回避したけれど、空中椅子をしているような状態になる。
「もしかして、瑞沢、隣?」
「し、のみやくん……!」
まっすぐ見つめてくる篠宮くん。
慌てて体勢を立て直して、それから忘れずに前髪を手でガードした。
私、運を使い果たしちゃったのかもしれない。
というか、前髪をばっさり切るはめになるなんていう不運は、この幸運と引き換えだったのかも。
右隣、篠宮くん。
そんなことある? 嬉しい。
浮つく気持ち、それから体の右半分にぴりっと意識が集中する。いつもは、授業中、難しい内容になると自然と眠気が襲ってくるけれど、この席では絶対そんなことはないだろうなと思った。
「1ヶ月、よろしく」
こっちに体を向けて、篠宮くんがにこっと笑いかけてくれる。
「こちらこそ、ふつつかものですがよろしくお願いします……っ」
前髪ガードは崩さないまま、ぺこりとおじぎをした。



