「行こ」
体の横でだらーんと垂れている腕を伸ばし、スクールバッグの持ち手を握る。
暖房を入れる時期にはまだ早い十月。
日によって気温は上がり下がり。
玄関の扉を開けると同時に体を包む冷たい風。
「さっむい、ヒートテック着れば良かった」
上から制服を着るとは言っても、中がキャミソールじゃ寒い。
両手で自分の体を抱きしめる。
首を触ろうとしたけど、手が冷たくてもっと冷えるのを想像してやめた。
風が肌に触れてヒリヒリするような感覚。
昨日の生暖かい風が恋しく感じる。
「いってきます」
もちろん誰も返してくれない。
分かっててそう言ったのは、寂しいと認めたくなかったから。
喉から外へ押し出すようにして吐き出された声は、床の下へ下へと沈んでいった。
