囚われの女神は焔と共に。


右耳から左下に向かってまっすぐ伸びた綺麗な線。


見た目とは裏腹に触ってみると少しザラザラしていて気持ち悪い。


この傷を見たくなくて、何度も鏡を割ろうとした。


見えない鎖に首を絞められてるみたいで、見ることも戸惑う。


’あいつ’が、頭の中で逃げられないと囁く。


もちろん、忘れようとした。


気にすることじゃない、たいしたことじゃない。


一年も前のことなんだからって、そう自分に言い聞かせて。


でも。


でも、忘れようとするたび、首の傷が痛くて、


『お前は逃げられない』


『俺のためだけに生きるんだよ』


『抵抗するの?俺の手で殺せるなら、じっくり痛めつけて殺すのも悪くない』


そう傷から頭へ響くようにこだまする。


低くて、どこか不気味なあいつの声が。