わたしが学校に戻ってきたとき、グラウンドの端には準備体操を終えた選手たちが、円になって集まっていた。
その中心にいるのは体育の藤井先生と、福山先輩だ。
「福山、本当のことを言え。お前ケガしてるんだろ」
藤井先生は先輩をパイプ椅子に座らせて、先輩の右足首に触れながら、険しい顔をしていた。
先輩は藤井先生をまっすぐ見つめ、気丈な口調で言葉を返す。
「大丈夫です」
「嘘をつくな。こんなに腫れてるのに」
「平気です。走れます」
「バカなこと言うんじゃない。今は走れても、あとからもっと腫れがひどくなるぞ」
「お願いします。参加させてください」



