「本当は先輩、安静にしてなきゃいけないのに、絶対に出るって言って、ゆずらなかったんだって」

「………」


心臓が早鐘のように打ち、息が苦しくなってくる。寒いはずなのに、握りしめた手には汗がにじんでいる。

わたしが焦ったところで、どうしようもない。
わたしが先輩に対してしてあげられることなんて、何もない。

だけど……わかっているけど。


「あっ、おい! 沙和!」


いてもたってもいられずに、わたしは勢いよく立ち上がり、学校の方へ走り出した。