ほんの数十秒のやり取りだった。きっと先輩にとっては何てないことで、わたしの存在もすぐ忘れてしまうだろう。 だけどわたしにとっては、夢みたいな出来事で……。 ……先輩。 走っていく背中に、わたしは心の中で語りかけた。 福山先輩、あのね。 わたし、一年の北村沙和っていいます。 ずっと先輩に憧れてました。先輩の走る姿、いつも教室から見てました。