「暁は何も知らなくていいよ」


「え？どういう意味だよ？」



ポカンと唖然としている暁をその場において、あたしは課へと戻る。

その間も、あたしの頭には忘れようとしても忘れられない苦い思い出が走馬灯のようにえがかれていた。


あの時、どうしてかはわからないけど、あたしは東京にきた。
そして、どうやって分かったのか暁が通っていた大学の前にきたんだ。
暁と出会ったとき、彼は高校生で大学の話なんて一切していなかったはずなのに。

そして「あの人だ、あたしがチョコレートを渡したい人」って、直感的にビビッときて、暁の近くまで行ったんだ。
そしたら、その時暁と腕を組んでる女性がいて、その女性とキスを交わした暁をみて、あたしは背を向けてその場を去ったんだ。

どうして、忘れていたはずなのに暁のことが直感的にわかったのかは謎だけど。
たしかに、あたしは誰かもわからない、記憶の中のその人に恋をしていた。

でも、たしかにその人に渡したくて、チョコレートを作ったけど、渡せなかったという苦い思い出が2月になると思い起こされる。