神楽の真っ直ぐな視線。それに答えるように微笑む。

ほら、もういいんだよ。

「俺、彼女出来た、」

何故か私から目線を外してバツが悪そうに言葉を落とした神楽。

「知ってるよ。」

私は淡く微笑んでみせた。知ってるよ、知ってるさ。それは私が神楽の幼なじみだからなんて言うストーカーのような狂気じみた理由ではない。

誰かが言っていたから。楽しそうに歩いている所を見た、と。噂では確か他校の人だった気がする。

「知ってたのか……」

「うん、まぁ、噂になってたしね。」

ゆっくりと視線を合わせた神楽だったけれどまたすぐに逸らした。

「由乃のそばにいるって言ったのに、いれなくてごめん。」

「ううん、神楽は充分私のそばにいてくれたよ。10年も、近くで支えてくれてたじゃん。」

あの人がいなくなったと聞いて私よりも泣いた君。そんな君がずっとそばにいてくれたから元気が貰えた。