「今思えば色々あったよね。私の母親だった人が出て行って、なぜかあんたが泣いたり。

いじめっ子に嫌がらせをウケてた神楽を私が助けたり。」

「そんなことあったか?」

「あったよ。」

「ああ、これなら覚えてるぜ?」

意地悪をするように片方の口角をニィッと釣り上げた後、空を見上げる神楽。それに釣られて私も何となく手を伸ばしてみる。

グッ、と伸ばした手のひらを握ってみたけれど分かり切った通り何も掴むことは出来なかった。

うーんと思いっきり背筋を後ろへとのばした神楽はこちらがビックリするほどの勢いでいきなり体をグンと前に倒す。

「なにやってんの?」

「別に。あ、そうそう。」

「なに?」

「俺がよく覚えてる記憶の話な。由乃、お前さ、俺が子供の頃にアイス落としたって知った時に俺の口に自分のアイス突っ込んだよな。」

「そうだったっけ?」