机に突っ伏した瑞穂くんは動かない。
え、彼はいまからここでお昼寝でもするつもりなのだろうか。帰った方がいいのでは?と思ったところで、彼にいま帰られてしまったら困るのは私だと自分が緊急事態であることを思い出す。
「瑞穂くん、お願いがありまして」
「……」
「あの、瑞穂くんのスマホを貸してはいただけませんか?」
目の前の瑞穂くん。いや、瑞穂くんのつむじにお願いをしてみる。
すると一瞬顔を上げた瑞穂くんは無言のままスラックスのポケットから、シルバーのケースを纏ったスマホを取り出しゴトッと無機質な音を立て机の上に差し出した。
瑞穂くんはまた両腕で顔を抱え込み、机の上でおやすみモードに入る。
「ありがとうございます」
「……」
これで私のスマホに電話をして、見つけてくれた人が電話に出てくれるか、この教室で音が鳴ってくれれば全て解決なのだが。
瑞穂くんのスマホを手にし、さっそく電話をかけようとホームボタンを押せばまさかのトラップ発動。
画面に表示された『パスコードを入力してください』の文字。