卵焼きをひと口食べると、ふわっとした柔らかな食感と、少しの甘さが口の中に広がる。
……美味しい。
温かいごはん。
あたたかい雰囲気。
“癒される”
久しぶりに、その言葉が頭によぎった。
ふと視線を前に向けると、俺の前に座っているのは紗良の父親。
スーツを着て、仕事に行く準備は万端で、せわしい様子もなく美味しそうにごはんを食べている。
優子さんと話をしながら、笑っていた。
……ネクタイ、青色。
スーツもキッチリ……。
紗良の父親は、しっかりした父さんなんだな……。
箸を止めて無意識に紗良の父親をじっと見てしまっていた俺。
それに気がついたのは、紗良の父親と目が合った瞬間のことだった。
「ん?気分でも悪いかい?」
紗良の父親が俺に声をかけてきたことに、俺は驚いて肩をビクつかせてしまった。
「あ、いえ……」
「父親」という存在を見ると、自分の父親と重ねて見てしまう。
そして、自分が殺した場面も……鮮明に思い出す。
「父親」は、苦手だ。

